みなさんは野球の「UZR」という指標をご存知でしょうか。
野球中継やスポーツニュースなどを見ていても、UZRについて触れられることはほとんどありません。
そのため、「UZRが何を意味しているのかよく分からない」という方も多いはずです。
そこでこの記事では、野球選手の守備能力を評価する指標の一つである「UZR」について詳しく解説します。
- 野球のUZRの意味や評価基準
- 野球のUZRの計算方法
- UZRで守備能力を評価する際の注意点
野球のUZRとはどんな意味?

野球のUZRは「Ultimate Zone Rating(アルティメット・ゾーン・レーティング)」の略で、選手の守備能力を示す指標の一つです。
同じ年度の同じリーグ、同じポジションの選手と比較して、守備でどれだけの失点を防いでいるかを示します。
UZRの値が高いほど守備で失点を防いでおり、チームに貢献していると言えます。
野球のUZRの計算方法

UZRの計算方法は非常に複雑です。
多くの専門的な知識と詳細なデータが必要なため、個人で計算することはほぼ不可能だと言われています。
ここではまず、UZRの基本的な計算手順をご紹介していくことにします。
- グラウンドをいくつかのゾーンに区切り、各ポジションの評価範囲を決定する
- 各ゾーンに飛んだ打球の速さや種類(ゴロ、フライなど)を記録する
- 各ゾーンにおいて、どのような打球がアウトになっているのか分析し、リーグごとに平均値を算出する
- 同じリーグの同じポジションを守る選手と比較して、選手の守備を評価する
- 守備の評価に得点価値を掛け合わせて、プラス評価もしくはマイナス評価を算出する
- 算出した値をすべて合計してUZRを算出する
上記の手順で計算されるUZRですが、プラス評価・マイナス評価は具体的にどのように計算されているのでしょうか。
プラス評価、マイナス評価の解説を行う前に、まずは「得点価値」について理解する必要があります。
ここから、UZRの計算方法について、さらに詳しく解説していきます。
UZRを計算するために知っておきたい「得点価値」とは?
UZRは得点を単位として守備の評価を行う指標です。
そのため、UZRの計算は「得点価値」という値を掛け合わせて算出します。
野球では過去のデータを基にして、一つひとつのプレーにどれくらいの価値があるのかという基準が設けられています。
例えば・・・
- 外野へ安打を許した場合は、チームの失点を約0.56点増やす
- アウトを取った場合は、チームの失点を約0.27点減らす
と言われているそうです。
つまり・・・
外野への安打となる(失点が約0.56点増える)はずだった打球をアウトにする(失点を約0.27点減らす)という働きは・・・
「失点の見込みを約0.83(0.56+0.27)点減らした」ということになります。
よって、打球の得点価値は0.83点として計算されます。
UZRの計算における「守備の評価」とは?
ここからは、UZRの計算方法をさらに具体的に見ていきましょう。
ここでは例として、過去のデータから75%の割合で安打となるような外野へのライナーが飛んだ場合を考えます。
この打球は25%の割合でアウトにすることが可能ですが、このうち15%の割合でセンターが、10%の割合でレフトがアウトにできる可能性を持っています。
守備を行った結果、選手にプラス評価が与えられる場合と、マイナス評価が与えられる場合をそれぞれ見ていくことにしましょう。
選手の守備に対してプラス評価が与えられる場合
この打球を捕球してアウトを成立させた場合は、アウトを成立させた選手へプラス評価が与えられます。
今回は、センターが捕球した場合を考えてみましょう。
アウトを成立させたセンターは、25%しか見込みがなかったアウトを100%にしたので、その差分である0.75を守備の評価として得ることができます。
守備の評価である0.75に、この打球の得点価値である0.83を掛け合わせた0.6255点が、センターを守る選手のUZRです。
※得点価値については上述の「UZRを計算するために知っておきたい「得点価値」とは?」を参照してください。
つまり、センターを守る選手の守備によって、「チームの失点を0.6255点防いだ」ということになります。
選手の守備に対してマイナス評価が与えられる場合
この打球をアウトにすることができず、安打になった場合はセンターとレフトを守る両選手がマイナス評価を受けます。
今回のケースでは、打球をアウトにできる見込みが25%あったため、安打になったことで0.25の損失が生じました。
アウトにできる可能性を持っていたポジションの選手は、この0.25の損失を、それぞれの責任の割合に応じて分配します。
アウトにできる見込みが15%だったセンターと、10%だったレフトが負う責任の割合はそれぞれ以下の通りです。
- センター:60%(0.15÷0.25=0.6)
- レフト:40%(0.1÷0.25=0.4)
今回のプレーで生じた損失である0.25のうち、センターは60%にあたる0.15を、レフトが40%にあたる0.1の責任を負います。
そして、この打球の得点価値である0.83を掛け合わせてセンターとレフトを守る選手のUZRを計算します。
- センター:0.15×0.83=0.123
- レフト:0.1×0.83=0.083
よって、この打球をアウトにできなかったことで、センターは0.123点、レフトは0.083点だけチームの失点を増加させたとして、マイナス評価が与えられます。
UZRの計算には値の補正が行われる
UZRの計算では、すべての試合で上記のようにプラス評価とマイナス評価を各選手に与えていきます。
さらに、ランナーの状況やアウトカウント、試合が行われる球場といった様々な要素を加味して、値の補正が行われています。
そして、その値を選手ごとに合計したものが、選手の最終的なUZRです。
またUZRでは、計算の対象外となる打球もあります。
- 内野フライ
- 内野へのライナー
選手の守備能力に関わらず、アウトにできる確率が非常に高い内野フライは、UZR計算の対象外です。
また、内野へのライナーは、内野手の手が届く範囲に偶然打球が飛んできた可能性もあるため、守備能力評価をするには適さないとされています。
野球のUZRの評価基準
UZRの評価基準は以下のように考えられています。
なお、UZRは相対評価のため、平均値は0となります。
UZR | 選手への評価の目安 |
---|---|
+15 | ゴールデングラブ級 |
+10 | 優秀 |
+5 | 平均以上 |
0 | 平均 |
-5 | 平均以下 |
-10 | 悪い |
-15 | 非常に悪い |
UZRで守備能力を評価する際の注意点

選手の守備能力を示す指標の一つであるUZRには、いくつかの注意点が存在します。
ここでは、以下の3つを挙げています。
- 投手・捕手の守備力を評価するには適さない
- 出場試合数による影響を受ける
- 年度、リーグ、ポジションが異なる場合は比較が難しい
詳しく見ていきましょう。
UZRの注意点①:投手・捕手の守備力を評価するには適さない
投手と捕手は、打球を処理すべき範囲が非常に狭いポジションです。
そのため多くの場合、投手と捕手においては、守備力の評価にUZRを用いることはありません。
ただし、株式会社DELTAが運営する1.02 Essence of Baseballでは、独自の手法で投手と捕手のUZRを計算し、評価しています。
UZRの注意点②:出場試合数による影響を受ける
前提として、UZRは確率ではありません。
UZRは、一つひとつのプレーをすべて評価した上で、その合計によって算出されるものです。
そのため、出場試合数が多い選手ほど、評価の値はプラスにもマイナスにも大きくなる可能性があります。
このような特性から、出場試合数が異なる選手同士をUZRで比較することは適切ではありません。
そこで、できるだけ同じ条件でUZRの比較を行うために、1000イニングあたりのUZRを示す「UZR/1000」が用いられています。
UZRの注意点③:年度、リーグ、ポジションが異なる場合は比較が難しい
UZRは、同じ年度の同じリーグ、同じポジションの選手と比較して算出する相対評価です。
そのため、守備力がまったく同じ選手であっても、年度が替わり、周りの選手が変わればUZRの値が大きく変わる可能性があります。
過去の自分のUZRや、ポジションが異なる選手との比較ができないため、「選手の守備力が向上しているかどうか」を測ることができません。
まとめ:野球のUZRとは?
この記事では、野球のUZRについて解説しました。
ここまでの内容をまとめます。
- 選手の守備能力を示す指標の一つ
- 同じ年度の同じリーグ、同じポジションの選手と比較して、守備でどれだけ失点を防いだかを示す
- UZRの値が高いほど守備で失点を防いでおり、チームに貢献していると言える
- UZRの計算方法は非常に複雑で、個人で計算することは難しい
- 投手・捕手の守備力を評価するには適さない
- 出場試合数による影響を受ける
- 年度、リーグ、ポジションが異なる場合は比較が難しい
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