野球における「肉体的援助(にくたいてきえんじょ)」とは、プレー中の反則行為のひとつです。
走者が走塁を行う際に、一塁または三塁のベースコーチから肉体的な援助を受ける行為を指します。
肉体的援助は、プロ野球や高校野球で稀に起こる珍しいプレーです。
この記事では、野球の走塁における肉体的援助のルールについて詳しく解説します。
プロ野球や高校野球で実際に起こった事例も紹介していますので、ぜひ最後までご覧ください。
このサイトでは、野球の公式ルールを定めた公認野球規則をもとにルール解説しています。
野球のルールをしっかり理解すると、プレーや観戦がさらに面白くなります。
細かいルールまで確認したい方は、公認野球規則をぜひ一度手に取ってみてください。
- 野球の走塁における肉体的援助のルールについて
- ベースコーチが走者に触れたときの判断基準
- プロ野球・高校野球で実際に起こった肉体的援助の事例
- ホームラン時のハイタッチの考え方
野球における肉体的援助とはどんなルール?
野球における「肉体的援助(にくたいてきえんじょ)」とは、プレー中の反則行為のひとつです。
走者が走塁を行う際に、一塁または三塁のベースコーチから肉体的な援助を受ける行為を指します。
ベースコーチの肉体的援助については、公認野球規則6.01(a)(8)で以下のように定められています。
公認野球規則6.01(a) 打者または走者の妨害
次の場合は、打者または走者によるインターフェアとなる。
(8) 三塁または一塁のベースコーチが、走者に触れるか、または支えるかして、走者の三塁または一塁への帰塁、あるいはそれらの離塁を、肉体的に援助したと審判員が認めた場合。
インターフェアに対するペナルティ:走者はアウトになりボールデッドとなる。
審判員が、打者、打者走者または走者に妨害によるアウトを宣告した場合には、他のすべての走者は、妨害発生の瞬間にすでに占有していたと審判員が判断する塁まで戻らなければならない。ただし、本規則で別に規定した場合を除く。参照:公認野球規則

インターフェアとは、守備妨害のことだよ!
ベースコーチが走者に触れたら必ず肉体的援助になる?
ベースコーチが走者に触れた場合に、必ずしも肉体的援助と判定されるわけではありません。
ベースコーチが走者に接触したことで「走塁を物理的に助けたかどうか」という点がポイントです。
たとえばプロ野球の試合で、投球の合間にベースコーチが走者に声をかけて、軽く背中を叩くような光景があります。
しかし、このような接触で審判が肉体的援助だと判定することはありません。
一方で、転倒した走者をベースコーチが起こしたり、進塁の際に身体を押したりする行為は肉体的援助と判定され、走者にアウトが宣告されます。
野球で肉体的援助が適用される具体的な状況とは?
たとえば、以下のような場合に肉体的援助のルールが適用されます。
- 二塁走者が三塁をオーバーランしそうになった際に三塁ベースコーチが走者の身体を支えた
- 本塁へのタッチアップで、三塁ベースコーチが走者の背中を叩いてスタートを切らせた
上記はあくまで一例です。
このように、明らかに走塁を肉体的に援助したと判断された場合に、その走者にアウトが宣告されます。
プロ野球で肉体的援助が起こった事例
プロ野球で実際に肉体的援助が起こった事例を紹介します。
ここで紹介する事例は下記の2つの試合です。
- 2017年5月19日|西武vsソフトバンク
- 2025年6月29日|ロッテvsソフトバンク
2017年5月19日|西武vsソフトバンク
2017年5月19日にメットライフドームで開催された、西武vsソフトバンクの試合です。
肉体的援助が起こったのは、4回表ソフトバンクの攻撃で、二死二塁の場面でした。
打者の中村晃選手がライトへヒットを放つと、二塁走者のアルフレド・デスパイネ選手は三塁を蹴って一気に本塁へ向かおうとしました。
しかし、三塁ベースコーチの村松有人コーチは走者へストップの指示を出しており、走ってくるデスパイネ選手を避けようとしましたが、2人は三塁線上で接触。
このプレーが村松コーチの肉体的援助と判断され、デスパイネ選手にアウトが宣告されました。
2025年6月29日|ロッテvsソフトバンク
2025年6月29日に千葉ZOZOマリンスタジアムで開催された、ロッテvsソフトバンクの試合です。
肉体的援助が起こったのは、7回裏ロッテの攻撃で、無死一・二塁の場面でした。
打者のネフタリ・ソト選手が右中間へ二塁打を放ち、二塁走者の西川史礁選手は本塁に生還。
一塁走者のグレゴリー・ポランコ選手も三塁を蹴って本塁へ向かおうとしました。
しかし、三塁ベースコーチの大塚明コーチはストップの指示を出しており、勢い余ったポランコ選手は大塚コーチに触れてしまいます。
このプレーが大塚コーチの肉体的援助と判断され、ポランコ選手にアウトが宣告されました。
高校野球で肉体的援助が起こった事例
高校野球でも肉体的援助のルールが適用された事例があるので紹介します。
2022年3月25日|木更津総合(千葉県)vs金光大阪(大阪府)
2022年3月25日に開催された、第94回選抜高等学校野球大会の2回戦で、木更津総合(千葉県)vs金光大阪(大阪府)の試合です。
肉体的援助が起こったのは、8回表木更津総合の攻撃で、無死一・二塁の場面でした。
打者の空康輔選手がレフトへヒットを放ち、二塁走者の大久保達希選手は三塁を蹴って本塁へ向かおうとしました。
しかし、三塁ベースを蹴ったところで転倒してしまいます。
このため三塁ベースコーチは三塁へ戻るように促しましたが、その際に走者の体に触れてしまいます。
このプレーが肉体的援助と判断され、大久保選手にアウトが宣告されました。
ホームランを打ったときのベースコーチとのハイタッチは肉体的援助になる?
プロ野球では、フェンスを越えるホームランを打った打者がダイヤモンドを一周する際に、ベースコーチとハイタッチする姿をよく見かけます。
この場合の接触は、打球がフェンスを越えた時点でボールデッド(試合が停止している状態)になっているため、走塁を援助するものではありません。
よって、ホームランを打ったときのベースコーチとのハイタッチは、肉体的援助の反則行為には該当しません。
高校野球などのアマチュア野球の場合は?
ホームランを打ってダイヤモンドを一周する際に、ベースコーチとハイタッチする姿は、プロ野球で当然のように見かける光景です。
しかし、高校野球などのアマチュア野球では、ホームランを打ったときのベースコーチとのハイタッチを禁止している風潮があります。
これは、高校野球などのアマチュア野球では、フェアプレー精神を重んじる教育的観点が強く働いているためだと考えられます。
ホームランを打ってダイヤモンドを一周する際に、ベースコーチとハイタッチする姿はパフォーマンスと認識され、相手チームへの侮辱行為と見なされるそうです。
ベースコーチ以外の攻撃側の選手と接触した場合は?
打者や走者が、走塁中にベースコーチ以外の攻撃側の選手と接触することについては、公認野球規則に定められていません。
ここで言うベースコーチ以外の攻撃側の選手とは、ベンチから出てきた選手などを指します。
公認野球規則で定められていない理由として、競技中に選手や審判員、ベースコーチ以外の人物がグラウンドに出ること自体が認められていないからだと考えられます。
高校野球でホームランのあとに走者がベンチ選手と接触した事例
高校野球でフェンスを越えるホームランを打ったあとに、ホームイン前の走者がベンチから出てきた選手と接触したという事例があるので紹介します。
関東地区高校野球連盟は、試合の翌日に、以下のような公式見解を発表しています。
「3番森がホームランを放った。サヨナラホームランで喜ぶベンチから飛び出した控え選手と一塁走者が本塁周辺で接触した。常総学院から補助行為ではないかとアピールがあったが、オーバーフェンスのホームラン(ボールデッド)なので、肉体的な援助には当たらないと審判は判断し、球審が場内アナウンスを行った上でゲームセットとした。大会本部から、桐蔭学園に対して試合後、注意をした」
引用:控え選手と走者が接触、桐蔭学園戦で公式見解 – 高校野球 : 日刊スポーツ
肉体的援助のルールを理解して野球をもっと楽しもう!
この記事では、野球の走塁における肉体的援助のルールや事例を紹介しました。
野球における「肉体的援助(にくたいてきえんじょ)」とは、プレー中の反則行為のひとつです。
走者が走塁を行う際に、一塁または三塁のベースコーチから肉体的な援助を受ける行為を指します。
ベースコーチの肉体的援助については、公認野球規則6.01(a)(8)に定められています。
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